こんにちは!
スタッフの坪田です。
巷では、インフルエンザが流行っておりますが、
皆様いかがお過ごしでしょうか。
さて今回は、令和8年4月1日より施行予定の 「スマート変更登記」 についてご紹介したいと思います。
不動産登記に関連する制度ですが、あまり聞き慣れていない方も多いのではないでしょうか。
それでは、さっそく見ていきましょう!
まずは、スマート変更登記が施行されることになった背景から見ていきましょう。
令和8年4月1日から、不動産の所有者は住所や氏名の変更があった場合、
2年以内に変更登記をすることが義務付けられることになりました。
また、義務に違反した場合、過料が科される可能性があり、
従来よりも不動産所有者の手続きや費用の負担が増えることが予想されています。
不動産の所有者(所有権の登記名義人)は、氏名若しくは名称又は住所(以下「住所等」といいます。)について変更があったときは、
その変更日から2年以内に変更の登記の申請をすることが義務付けられます(不動産登記法第76条の5)。
また、正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、5万円以下の過料の適用対象となります(同法第164条第2項)。
この住所等変更登記の義務化の施行日は令和8年4月1日ですが、施行日より前に住所等を変更した場合であっても、
変更登記をしていない場合には義務化の対象となり、令和10年3月31日までに変更登記をしていただく必要があります
(民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)附則第5条第7項)
この義務化に伴い、「スマート変更登記」が新設されました。
この制度は、不動産所有者の住所・氏名に変更があった場合、法務局の登記官が職権で登記申請を行うというものになります。
つまり、本来は不動産所有者自身が行うはずの変更登記を、国が代わりに行ってくれるというわけです。
以下は、法務省が公表している手続きイメージ図になります。
・職権による住所変更登記の手続イメージ(自然人の場合)
・職権による住所変更登記の手続イメージ(法人の場合)
(いずれも法務省のホームページより)
なお、この制度の利用方法については、自然人と法人によって「申出に必要な情報」と「申請の基準日」が異なるため注意が必要です。
自然人がこの制度を利用する場合、事前に「検索用情報の申出」という手続きが必要になります。
この「検索用情報の申出」を行うタイミングは、次の2パターンです。
① 同時申出
令和7年4月21日以降に新たに不動産の登記名義人になる場合、
所有権保存や所有権移転等の登記と併せて「検索用情報の申出」を行います。
② 単独申出
令和7年4月21日時点で既に不動産の登記名義人になっている場合、
登記申請とは別に「検索用情報の申出」を行います。
この場合、オンライン若しくは書面による手続きになります。
法人がこの制度を利用する場合、「会社法人等番号の申出」という手続きが必要がなります。
こちらも自然人と同様、申出のタイミングが2パターンあります。
① 同時申出
令和6年4月1日以降に新たに不動産の登記名義人になる場合、
所有権保存や所有権移転等の登記と併せて「会社法人等番号の申出」を行います。
② 単独申出
令和6年4月1日時点で既に不動産の登記名義人になっている場合、
登記申請とは別に「会社法人等番号の申出」を行います。
この場合、オンライン若しくは書面による手続きになります。
次に、スマート変更登記のメリットと注意点について、見ていきましょう。
この制度のメリットとして、主に3つ挙げられます。
(1)住所等変更登記が不要になる
先ほどの項目でお伝えした通り、不動産の所有者は住所や氏名の変更があった場合、
2年以内に変更登記をすることが義務付けられることになりました。
しかし、スマート変更登記を利用すれば、引越しや結婚で住所や氏名が変わっても、変更登記の申請をする必要がなくなります。
加えて、義務違反による過料を避けることができます。
(2)登録免許税の負担を軽減できる
通常、住所等変更登記を申請する場合、不動産1個につき登録免許税1,000円が発生します。
しかし、スマート変更登記の申請後に住所や氏名の変更があった場合、登録免許税が発生することはありません。
そのため、複数の不動産を持っている方ほど、費用面でのメリットは大きくなります。
(3)将来の相続手続きがスムーズになる
相続が発生した際に登記簿上の住所が古い場合、戸籍の附票や住民票の除票との照合に時間がかかり、
必要書類の取得に手間取ることがあります。
スマート変更登記を利用することで、登記簿上の住所が最新の状態に保たれるため、
こうした確認作業の負担が減り、相続登記の申請をより円滑に進めることができます。
ここまで、メリットを見てきましたが、利用する際に知っておきたい注意点がいくつかあります。
(1)情報の反映までにタイムラグがある
スマート変更登記では、法務局が検索用情報をもとに住基ネットに照会し、住所の変更が確認された段階で職権により登記を更新します。
ただし、住基ネットへの照会は定期的に行われる仕組みのため、
住所変更直後は、登記簿が最新の状態に更新されていない可能性があります。
そのため、住所変更後すぐに売却などの手続きを予定している場合には、注意が必要です。
(2)自動更新されるのは「住所」や「氏名」のみ
スマート変更登記で自動的に反映されるのは、所有者の「住所」や「氏名」などの基本情報のみになります。
そのため、所有権移転等の権利内容に関わる登記は対象外のため、従来どおり申請手続きが必要になります。
いかがでしたでしょうか。
今回は、令和8年4月1日から施行される「スマート変更登記」についてお話しさせていただきました。
従来、住所や氏名の変更に伴う登記手続きは、そのまま放置されてしまうケースが少なくありませんでした。
その結果、所有者の所在がわからなくなり、売却や相続の手続きが進められない、
いわゆる「所有者不明土地問題」にまで発展してしまいました。
スマート変更登記の導入により、こうした所有者情報の“更新漏れ”を防ぎ、登記簿を常に最新の状態に保てるようになります。
これにより、不動産管理の確実性が高まり、所有者不明土地の発生を未然に防ぐことが期待されています。
また、この新制度は、自動的に更新される便利な制度ですが、
利用するためには事前の申出が必要であったり、情報の反映までにタイムラグがあったりと、いくつか押さえておきたい点もあります。
新制度が始まる前に、ご自身の状況に合わせて準備を進めていただくことが大切です。
■ スマート変更登記について相談したい方へ
「自分の場合は申出が必要なのか?」「準備しておく書類は?」など疑問があればお気軽にご相談ください。
当事務所では、状況確認から登記申請まで一貫してサポートしております。
無料相談も行っておりますので、ぜひご利用ください。
それではまた!